ファミリーの1歩先には親子スタイル

リアルな十代を描くヤングアダルト小説

いまや国際的最大知的産業ともいえる「マンガ」というメディア・文化を持つ日本では、ケータイ小説やRPGが現れる前から、十代の少年少女たちが人生を仮想体験することが可能であり、彼らが成長していくにつれ、青年向け・成人向けジャンルも開拓されていったたが、幅広い年齢層に支持される「マンガ」ではなく、もっと幼い年齢層をターゲットとした「コミック」というジャンルしか無かったアメリカでは、最近になって、「シン・シティ」で有名なフランク・ミラーが確立した「グラフィック・ノベル」などが台頭してきたものの、人前で広げて読むには、ちょっと幼稚で恥ずかしい、という認識がまだあるらしく、もう子どもじゃない、でも大人じゃないの、という、まさに「親子スタイル」の世代である子どもたち向けのコミックというのはなかなか無いようで、そういった世代から支持されているのが、ヤングアダルト(YA)と呼ばれる、文字通り「若い大人向けの」小説である。

人種・性別・地域・文化・収入、様々な「格差」が入り乱れる移民大国アメリカでは、不幸な人生自慢にかけては誰にも負けません、という若者が決して少なくない。先進国と言われながら、医療保険が適用されず、高額な医療費を払えないために、ねんざがきっかけで障害者になってしまう人もいる。アル中・ヤク中の親に代わって生活費を稼ぐために体を売る子どももいれば、ディーゼルのジーンズにジューシー・クチュールのTシャツを当然のように着て、スターバックスで宿題をする子どももいる。
その格差はちょっとやそっとの努力で埋め合わせることができない。

ドラッグ、レイプ、ホモセクシュアル、親の離婚、十代の妊娠など、ネタだけ言えば日本のケータイ小説と大差無いように思われるだろうが、彼らが抱える苦しみの根は日本のそれよりもはるかに深い、アメリカの病巣を感じさせる。
レイプは集団の暴力による場合もあるから、HIVや性病、妊娠の危険だけでなく、生命自体が危険にさらされることが多い。親やきょうだいから受ける性暴力もある。
友だちは基本的に同じ地域・所得・人種から選ぶから、へたに真面目な話をしたら、いじめどころか、町全体から村八分に合うことだってありえるのだ。

それほどシビアな環境の中でも、人間は夢見ることをあきらめず、しあわせになりたいと願い、理解されたい、愛されたいと願う。若くて純粋なほど、その欲求は激しい。絶望的な状況であっても、私は変わりたい、いつかどこかで、ほんとうに愛し愛される人と出会いたい、そう願い続ける。

日本のケータイ小説の主人公たちとは違い、彼らは恋人を死病で失い、その思い出を懐かしむような余裕は無い。人生はどこまでも辛く、醜く、苦しく、たとえ愛する人と共にいたとしても、決して思うようにはならないし、痛みは癒されずにいつまでも生々しく残る。
リア・ブロック、アリス・ホフマン、アン・ブラッシェアーズなど、YA小説を代表する作家たちの作品はどれも、痛々しいほどにリアルで、残酷で、読んでいる方の心をえぐるほどの辛い現実を見せる反面、うっとりするような恋や友情を魔法のように美しく描き出し、詩のような言葉を連ねた文章をきらきらと紙面で躍らせる。

偉大な文学には足元にも及ばないかもしれない。けれど、YA小説には、痛みも苦しみもいつか希望に変わる、と信じたい若い読者を引き寄せる、強い魅力を持った作品が多い。今では古典と呼ばれる文学作品の中にも、YA小説・YA文学と位置づけられる作品も多くある。

リアルな痛みを描きながらも、美しい明日への希望を抱かせる、YA小説は次世代に必要不可欠な文学ジャンルなのだ。

(文:平野だい)

親子スタイルアドバイス
■お勧めの対象 いま少年少女・むかし少年少女だった人
■コメント ヤングアダルト小説は10代から20代を対象とした小説のジャンルです。親子でぜひお楽しみください
■コメント ヤングアダルト出版会

東京創元社ヤングアダルト叢書

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