ファミリーの1歩先には親子スタイル

風船と箱の関係

 つい先日、ゼミ(セミナー)の3年生と一緒に関東圏の他大学に行ってきました。日ごろ勉強していることをお互いに発表するためです。いわゆる交流ゼミのようなもので、わたしたち教員は”他流試合”なんて呼んだりしています。

 今回の交流ゼミのおもしろいところは、お互いが勉強した内容を発表するだけではなく、そこから派生したテーマについて、それぞれの大学のメンバーを混ぜたグループをつくって議論をして、まとめて、その結果をプレゼンテーションするという「ワークショップ」形式だったことです。


 自分のゼミで、いつも同じメンバー同士で議論を重ねていると、どうしても話が同じような方向に行きがちですが、今回のように今まではまったく接点のなかった学生たちの前で発表したり、議論をしたりすることで、自分たちが普段とてもせまい枠組みのなかで物事を捉えていたのだということにあらためて気がつかされます。

 もうひとつ、今回の交流ゼミには韓国の大学からも学生たちが参加しており、英語でプレゼンテーションやディスカッションをすることになっていました。私のゼミのほとんどの学生にとって、これは初めての経験でした。もちろん、英語を専門に勉強している学生たちではありませんし、準備の時間も限られていましたので、ほとんどの学生-いや、学生たちだけではなく私も!-は英語でのコミュニケーションに悪戦苦闘しました。こうして、ふだんとは異なる世界の人びとに出会うことで、いまの自分たちの力がどの程度のものなのかをリアルに感じることができたと思います。

 わたしはどちらかというと、普段の授業やコミュニケーションではできるだけ良いところを強調して、褒めることに意識をおいているつもりです(学生たちは「そんなことはない。十分厳しい!」と言うかもしれませんが・・)。しかし、今回のように外の世界に触れると、嫌でも自分たちに足りないところ、欠けているところがみえてきます。褒められることでモチベーションが上がり、自身の成長を促すことは多々ありますが、足りないところを突きつけられる場面というのも、自分自身が成長したり、変容したりしていく上ではとても大切な機会であるといえます。

 さてさて、ずいぶんと長くなりましたが、タイトルの風船と箱のお話です。
自分が成長しているとか、変容していることを実感できるようになるためにはなにが必要でしょうか?わたし自身もそうですが、人は自分自身の変化というものになかなか気づきにくいものです。

 ここで、自分が成長・変容していく様子を風船が膨らんでいくイメージで考えてみましょう。風船は周囲になにもなければ自分が膨らんでいるのかどうかよくわかりません。逆に、風船になにかが触れている感覚があれば、自分が膨らんでいることを実感しやすくなります。すなわち、箱のなかで風船が膨らんでいくイメージです。

 褒める言葉は風船に吹き込まれる”空気”であると考えられます。そのとき、褒める側がただ”空気”を吹き込むだけでは、褒められた側は自分の成長・変容に気がつきません。ただ褒めるのではなく、「こういう意味でいまの行動は良かったね」「こういう点でえらかったよ」というふうに、ある状況とか、ある枠組みのなかで褒めることで、褒められた側は自分の成長や変容に気づきやすくなるのです。褒めるときにある状況や枠組みを設定してあげること、これこそがまさしく風船にとっての「箱」の役割であるといえます。

 つまり、本当の意味での褒めるという行為は、相手を「箱」のなかにいれて、そのうえで空気を吹き込むというプロセスと考えることができます。

 さて、このように考えると風船にとって「箱」は不可欠なものなのですが、困ったことも起こります。それは、いつまでもおなじ箱のなかにいれっぱなしにして空気を吹き込み続けたとしても、ある段階をすぎると風船はそれ以上大きくなってはくれないということです(実際には、箱を替えずに空気を吹き込み続けると風船は破裂してしまいます。人にとっても同じことがいえるかもしれません。これについてはまた別の記事で書きたいと思います)。

 ということは、相手の段階に応じて、その段階に適した「箱」をきちんと与えることができるかどうかが、褒める上でとても重要なことがわかります。しかし、これは想像以上に難しいことなのです。なぜなら、いままでと同じような褒め方でこれ以上の成長や変容の余地があるかどうかを見極めるのはとても困難だからです。

 さらに、褒められることや、自分が成長したり変容したりしていることを実感できる感覚はとても心地よいですから、褒められる側―たとえば子どもたち―が、そこから出たがらないということもよく起こります。たしかにそのちっちゃな「箱」に居続けることができたなら、いつまでも心地のよい場所にいられるかもしれません。しかし、それではそれ以上の成長・変容は生まれてきません。ですから、状況をみて、今までどおりの心地よさを与えてくれる古くて小さな「箱」から出してあげ、また別の新しく大きな「箱」を提供してあげる必要がでてくるのです。

 新しい人との出会いや今までにない経験によって、人が成長するというのはまさにこのようなことを意味するのでしょう。親や教師が子どもたちと向き合うときには、子どもたちにとって、いまどんな箱が必要なのか、ということを意識することが求められているのだと思います。

 自分たちに足りないもの、欠けているものを突きつけられるのは、心地よくはない辛い体験であるともいえます。しかし、それを避けていてはさらなる成長や変容、そしてそれによって感じられるより大きな心地よさを得ることはできません。

 最後に、今回の交流ゼミでわたしにとって一番の収穫だったこと。
 最近、私自身という”風船”をいれておく”箱”を、ここのところ取り換えていなかったなぁ、と気がついたことです。せっかくの良い機会でしたので、もっと大きな「箱」に取り換えようかと思っています。

(文・石井雅章)

親子スタイルアドバイス
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■コメント 自分自身が言われて嬉しく感じた「褒め方/褒められ方」を思い出してみるのもいい方法です。
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