ファミリーの1歩先には親子スタイル

今月のktkr本 『神の守り人』/『バルサの食卓』

アンニョンハセヨ?、巻尾です。
先週末、子どもの部活の一環で、韓国に行ってきました。滞在48時間ほどのショートトリップでしたが、テーマのひとつは”食”。行く前から娘と「何食べる?」とガイドブックのグルメページをくまなくチェック、時間とお腹の許す限り食べまくったのでした。海外に行くと料理名も耳新しく、どんな食べ物なのか、想像する楽しみもありますが、特にハングルはほとんどわからないだけに、「ホットック」「パッピンス」「サムギョプサル」「オミザファチャ」など、ことばにするだけでワクワクものでした。どれもおいしかったですよー。

そんな韓国モードだったこの夏のktkrは、上橋菜穂子さんの名作「守り人」シリーズ関連の新刊、文庫版『神の守り人』と、文庫オリジナルの『バルサの食卓』です。シリーズ途中までしか追いついていませんでしたが、文庫版の広告につい惹かれ、久しぶりに「守り人」の世界を堪能しました。

『精霊の守り人』に始まる「守り人」シリーズは、異世界を舞台に、精霊の卵を産みつけられた皇子チャグムと、彼を守る短槍使いの女用心棒バルサを軸に、壮大なスケールで描かれた物語。日本を代表するファンタジーと称され、数々の児童文学賞を受賞しています。1996年に偕成社から児童書として刊行され、こちらは全10巻がすでに完結。2007年にNHK BS2でアニメ化、同年に新潮文庫になり、現在中盤の5,6巻まで刊行、そしてこの夏ファンブックとも言うべき『バルサの食卓』が登場と、児童書の枠を超えて人気が再燃といった感があります。

「守り人」の最大の魅力は、なんといっても主人公の女用心棒、バルサです。最初に読んだ時まず驚いたのが、バルサの描写。年齢は30歳、「顔にすでに小じわが見える」ヒロインなのですよ。シリーズが進むにつれ、最後は確か37歳。独身のアラフォーです。普通ファンタジーで、強い女性が主人公なら、若くて美人、がお約束かと思いますが、それを軽く裏切ってあまりあるバルサの活躍に、児童書読者も、きっと大人の読者も引き込まれるでしょう。そして幼なじみの薬草師タンダは、闘いで負ったバルサの傷を癒し、料理も上手な、年下男子。タンダの師匠、呪術師トロガイは70歳のスーパーお婆ちゃん、と、ステレオタイプではない登場人物たちが、とてもいい。文庫最新刊『神の守り人』にも、数奇な運命を背負う兄弟、信頼の厚い王、不穏な動きをする王の使いなど、人物造形がとてもしっかりしていて、物語の中で自然に立ち動いている印象です。

それからもうひとつ、登場するものの名称や、ディテールが凝っているのも面白いところ。地名や民族、国ごとの言語、動植物や食べ物の名前など、詳しく記され、使い分けられているのです。特に料理の名前とその描写はすばらしく、「あつあつのバム(無発酵のパン)に、たっぷりのラ(バター)」とか、「ジャイという辛い実の粉とナライという果実の甘い果肉をつけこんだ鳥肉」を飯にまぶした「ノギ屋の鳥飯」など、印象的な食事シーンがたくさんあるのです。

と、思う人はやはり大勢いたのね、というのが『タンダの食卓』。これは、守り人シリーズはじめ、上橋作品に出てくる料理を再現した、レシピ本です。料理制作には、今劇場公開中の「南極料理人」の原作者、西村淳氏も関わっており、そこも気になるところです。上橋さんの児童書体験や、作品中の料理についてのエッセイも収録されており、児童書読み心をくすぐる内容です。
ファンタジーのシリーズ物では、魔法使いのメガネ君が圧倒的人気ですが、さすがに刊を重ねるとちょっと・・・と思う節がないでもないこの頃、同じ時間をかけて読むのなら、断然「守り人」かと、私は思います。

(文・神谷巻尾)

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