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「入試によく出る小説」考

 受験シーズン真っ最中!ということで、今回は「入試によく出る」作家や小説についてふれてみることにしました。
 思えば数年前息子の中学受験で、入試国語の長文読解問題に、大人向けの人気作家の作品が頻出していることにえらく驚いたものでした。今の子ってこれ読めるの? 面白いと思うのかな、ていうか、今これ読むべき? などなど”子どもと本”について考えるきっかけともなった経験でもありました。


最近の入試ではどんな本が登場しているのでしょうか。中学受験に関してですが、日能研で毎年発表している「入試によく出る作品と作者」2009年のデータを見てみましょう。

1位 「しずかな日々」椰月美智子
2位 「友だち幻想―人と人の”つながり”を考える」菅野仁
3位 「西の魔女が死んだ」梨木香歩
   「つめたいよるに」江國香織
   「泣けない魚たち 」阿部夏丸
   「約束」石田衣良
   「いのちをはぐくむ農と食」小泉武夫
   「ボクシング・デイ」樫崎茜

 このうち「友だち幻想」と「いのちをはぐくむ食と農」は論説文です。前者がちくまプリマー新書、後者が岩波ジュニア新書なので、どちらもジュニア、YA世代を意識した新書です。最近新しく若い世代向けの新書シリーズが続々創刊されているので、今後も素材として登場しそうですね。

 小説の方は、一時期中学受験国語の定番だった、重松清の姿が見えません。といっても次の9位には「きみの友だち」「小学五年生」「くちぶえ番長」と3作入っています。さすがに出題者側も、重松対策をしてくる受験生に次の手を考えているのでしょうか。それにしても、小学生を主人公に、家族、友情、成長といったテーマを上手く盛り込んだ作品を量産する重松清、ある意味すごいですね。

 もしかしたらその路線にいっているかも、というのが石田衣良。もちろん「池袋ウェストゲートパーク」デビュー作家ですから、若者を描く作品も多いのですが、最近小学生が登場する作品が「5年3組リョウタ組」「チッチと子」と、じわじわと増えています。喪失、不登校、学校、父と子など、テーマもまさに入試の読解向きといえそうです。

 さて、あらためて上位を見てみると、数年前より若干変わった印象があります。上位作品が、石田衣良以外すべて児童書出身者の、児童文学、つまり、子ども向けに書かれた作品だということです。私はこれは健全になってきたのかな、と思いました。ここ数年、重松清はじめ、伊集院静、角田光代、小川洋子、池澤夏樹等々、一般向けの文学作品がやけに目立っていましたが、それを12歳の子どもが、しかも受験で読むというのは、何か違和感があるのです。大人に向けて書かれた作品は、小学生が主人公であっても、小学生向けの読み物ではないわけです。
 もちろん、子どもだからって大人の本を読んだって一向にかまわないし、自分で選んでおもしろいと感じれば、それもいいと思います。ただ入試というセレクションの場で、大人向けの作品を題材にして、大人の理解力を求めるということが目的になっていいのか、と思います。

 考えてみたら入試問題を作る中学校の先生は、児童文学にはなじみがないのかもしれないし、だいたい児童書の新刊も少なく、情報も得にくいから、比較的新しい世代の作家作品が登場するようになったのでは、というのは想像の域を出ませんが、「入試によく出る作品」が、小学校高学年向けの読書ガイド的な役割を果たしていることを考えると、本当に読んでほしい作品がリストに入っていてほしいな、と思うのでした。

 
(文・神谷巻尾)

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