ファミリーの1歩先には親子スタイル

みみのひ

3月3日、ひなまつりでした。
そして、「耳の日」でもありました。

私の従弟は先天聴覚障がい者です。
叔母が彼を妊娠中、風疹にかかり、生まれつきの障がいを負うようになりました。
当時、既に長男を育てていて、法律関係の仕事でキャリアと育児の両立を目指していた叔母は、医師に中絶の選択を聞かれ、かなり悩んだそうです。

しかし、叔父が、

「どんな子どもであっても、それは神様が、ぼくたちに必要だと与えてくださる子どもだから産んで欲しい。ぼくが必ずバックアップする。ぼくのキャリアを犠牲にしてもいい」

と言って、二人は出産前から聴覚障がいについて研究し、準備をして従弟を育てました。
読唇と発声法を幼い内に習得した従弟は、小学校から大学まで現役ストレート、ずっと普通学級在籍で進学し、一部上場企業に就職し、今も勤務しています。


私は今も、3歳年下の従弟が生まれて、小さな赤ん坊だった頃を覚えています。
可愛い赤ん坊で、私は夢中でした。母は私に言いました。

「この子は耳が聞こえないの。だから、あなたはこの子と一緒にいるときは、代わりにいろいろな音を聞いてあげて、危ないときは助けてあげなさい」

幼い私に、耳が聞こえないということはどういうことなのか、という事実は全く理解も想像もできませんでしたが、必死に手足を動かして意思を伝えようとしている、従弟の姿が可愛くてならず、

「耳が聞こえなくても、ずっと一緒に遊んであげるからね」

と、聞こえない小さな耳に囁きました。

関東と関西に離れて暮らしていたので、私が実際に従弟とコミュニケーションを取るのは一年の内に数十日にも満たないことがほとんどでしたが、私は従弟が大好きで、可愛くて仕方がありませんでした。
知能が高い彼は早くから読み書きができたので、一緒に本を読んだり、絵を描いたり、工作をして遊ぶことができました。彼の読唇術や発声法が役に立っていたのも事実ですが、自分のハンディキャップを隠さず、素直で、甘えん坊で、利口で、やさしい彼の性格が、愛さずにはいられなかったからです。

障がい者施設で働いていて、自身も障がいを持つ子どものママである友人が、

「障がい者の家族は、だいたい、障がい者を隠してしまう家族、障がい者を過保護に扱う家族、障がいと向き合って生きる家族の3つに分かれる。
ひどい場合、1番目は障がい者を捨ててしまい、2番目は自分で生きる力を奪ってしまう。
3番目も、権利意識や被害者意識が強かったりして、周囲と揉めることはあるけれど、一般社会で頑張ろうと努力し、自己肯定ができている分、はるかに生きていく力がある。
だから私は3番目のケースであろうと思ったの」

と言ったことがありましたが、叔父と叔母はまさにその3番目のタイプで、従弟の障がいを前向きに受け止め、積極的に行動していました。

「親は絶対に先に死ぬから、この子が一人で生きていける力を身につけさせないといけない。障がいを哀れんだり、落ち込んだり、卑屈になっている暇はない」
「障がいの無い長男の人生を、次男のために犠牲にしてはならない」
「障がいがあるからと普通のことをしないのではなく、あるからこそ、普通の子どもと同じことができないと生きていけない」

読唇術も、発声法を取得するためのキュードスピーチも、家族全員で修得し、大阪弁まで表現していました。喧嘩もにぎやかでした。英語もピアノも習いました。

世界を広げるために、と、早くからパソコンを与えられていたので、チャットやメールでいくらでも私たちは長話ができました。
携帯電話にメール機能があることが、あんなに嬉しいと思ったことはありません。聴覚障がいの従弟が「電話」を持って、リアルタイムで「電話」できるのです。
従弟は手話を使わないのですが、テレビ電話やネットの動画チャットのお陰で、大勢の聴覚障がいの人たちが、新しいコミュニケーションを楽しめるようになったのは、素晴らしいことだと思います。

従弟の家族には、とても人には言えない、家族間の憎悪や、いさかいもあったようですが、それは障がいのあるなしに関わらず、どこにでもあることなので、今回は触れずにおきます。

私の夫は、出会ったときから、従弟が大好きで、私以上に、従弟にやさしく、親切に接してくれ、まるで弟のように可愛がってくれています。
そして従弟は、私の息子を、まるで自分の子どもや弟のように可愛がってくれます。
息子がまだ赤ん坊の頃、従弟は大きな体を揺らしながら、息子を抱き、携帯の着信メロディから、息子が喜ぶ曲を選んでは聞かせていました。

耳が聞こえない従弟と、息子の間には、たくさんの音楽や、会話の記憶があるのです。無音であっても、そこには美しい旋律が確かに存在するのです。

歌手の今井絵里子さんは、従弟と同じく、聴覚障がいを持つ息子さんを持ち、シングルマザーながら、頑張って育児と仕事の両立をはかっていらっしゃいます。
有名人ということで、子どもの障がいを利用している、と批難する方もいらっしゃるようですが、彼女のような有名人が、障がいを持つ子の親だと公表すること、体験を語ることで、より多くの理解と共感が得られるのは事実です。

「障がいは個性。個性を認め合える社会になってほしい」

この言葉が、もっと大勢の人の元に届いて欲しいと私は思っています。

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(文:平野だい)

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