ファミリーの1歩先には親子スタイル

話題の本『桐島、部活やめるってよ』

先日バス停で聞こえてきた、たぶん男子中学生の会話。
「なんか部活、行けないんだよねー。でも行ってることになってるから、シャツにギャツビースプレーしといた」「親うるせーもんな」

  思わず、苦笑です。まさしく行ってるフリしていた息子に激怒して問いつめたら「なんか、行けない」と言っていたので。親にしてみたら、団体行動なのに迷惑かけて!嘘ついてまで!とキリキリしていたけれど、あの頃、なんだかわからないけど嫌になったり、思い詰めたり、そんなことが部活の中でたくさんあったんだっけな、と今さらながら思い出したりしました。


  そんなこともあって、今回は朝井リョウ『<a href="桐島、部活やめるってよ』です。第22回小説すばる新人賞受賞作、著者は1989年生まれの現役早稲田大学生、という話題性はともかく、新しい青春小説として人気、評価ともに高い作品です。
  ここ数年、部活をテーマにした小説や漫画、それを原作にした映画が急増していますよね。マイナーな、書道部や文芸部、園芸部など、文化部系のいかにもドラマになりにくそうな部活がテーマになってきました。結構気になって色々読みましたが、部員同士の人間関係や、競技描写など、まさしく「部活」が描かれていて、全般的に楽しめるジャンルです。

 『桐島、部活やめるってよ』は、少々それらの部活小説とは色合いが違います。タイトルの「桐島」は一度も登場せず、桐島が部活をやめることによって生じたちょっとした変化が、登場する他の高校生にもたらした波紋が描かれています。桐島がいなくなったかわりに、レギュラーの座をつかむことになったバレーボール部員、自分も部活を休んでいる野球部員、クラスのヒエラルキーでは「下の人」で女子にも蔑まれているけど、好きなことを続けている映画部員など、何かしら屈折した思いを持っている。恋愛、家族、友人、悩みはつきないけど、ちょっとしたことで何かが大きく変わったり、視野が広がったりする。そのきっかけが、部活であったり、同級生の桐島が部活をやめることだったりする。それぞれ葛藤をかかえていても、部活を、好きなことをしているときは、ひかりを放っている……そうだ、17歳の頃って、そんな世界だったんだ、と甦ってきます。

 大人はついそんなノスタルジー読みをしてしまいますが、つい最近まで高校生だった著者が描く17歳の学校生活は、音楽もファッションも恋愛もリアルで、同世代は自然と共感するでしょう。派手な展開もなく、わかりやすいキャラクターも出てこない文芸作品だけど、もし高校生に受入れられているとしたら、部活というものの存在を、間違えなく伝えているからでは、と感じました。
(文・神谷巻尾)

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(2010年05月22日 00:56) 個別ページ
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