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気になる本『ペンギン・ハイウェイ』

 中高生の読書調査や「おすすめの作家」などを見ると、あさのあつこ、森絵都、東野圭吾、宮部みゆき、などYAやエンターテインメント小説の人気作家にまじって、森見登美彦の名前をみかけることが最近多くなった気がします。
 もちろん、新作が出るごとに書店に平積みされているし、今年は『四畳半神話体系』がTVアニメ化されるなど、世代を超えて人気が拡張しているのでしょう。
 でも、森見作品の最大の特徴と言えば、舞台は京都、主人公は冴えない大学生。悶々とした青春に、恋愛、妄想、冒険、ファンタジーなどが交錯した不思議で壮大な世界を、独特の文体で描くという、個性的な小説を生み出してきた作家です。文学好き、読書家には熱狂的なファンは多いですが、中学生や高校生は、どんなふうに読んでいるんだろう、と気になっていました。


 そんな森見登美彦の最新作が、『ペンギン・ハイウェイ』です。
 
 200810000311.jpgこの作品、デビュー以来10作目にして、初めて非モテ大学生も京都も出てきません。語り手の「ぼく」は小学4年生、郊外の新興住宅地に住み、えらい人になるため本を読み、研究におこたらない、というこれまでとはがらりと異なる設定です。
 しかも冒頭の一節が、これ。

 ぼくは大変頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。
 だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。

 この始まりに、これまでの読者は大いに面食らうというものですが、ここは森見ワールドのシニカルな企みなのだ、とくすっと笑いながら読み進むと、徐々に物語にひきこまれ、まんまとその世界に入っていきます。
 街に突然あらわれたペンギン、なかよしの歯医者のお姉さん、街の探検、友だちととりくむ研究、など「ぼく」はさまざまな謎と出会い、考え、動き回ります。
 もちろん、奇怪なできごとや不思議な現象に興味津々にとりくむのですが、子どもにとっては、謎はそればかりではありません。川はどこまで続いているかということや、恋、おっぱい(!)、死、すべてが同じく謎で、知りたい研究対象なんですね。たくさん研究しすぎて問題がわからなくなっている僕に、父親がこう言います。

それは解決に近づいているのかもしれないぞ」
「なぜ?」
「それらの問題の正体は、結局一つの問題かもしれないからさ」

 物語終盤、街が封鎖されるという現象が起き、友だちと力を合わせて大人の計画阻止に挑む、というスリリングな展開を経て、とてもとても美しいエンディングを迎えます。一つの問題にたどりついた「ぼく」をそこに見つけることになるのですから。

 森見ワールド第2章の幕開けと称されるこの作品、これまでにないSF要素もあり、確かに新境地なのでしょうが、魅力的な人物や、スピード感、チャーミングな世界観は、やはり健在でした。中高生も、ニヤリとしながら読みそうな作品なのでは?と思います。
 森見登美彦氏のブログ「この門をくぐる者は一切の高望みを捨てよ」には、この小説が「助けられた本」として、執筆中にそばにあったという本が紹介されています。SFの古典や児童書、レゴの本に理科年表など、こちらも読後ニヤリとして読みました。
『ペンギン・ハイウェイ』が助けられた本たち

(文・神谷巻尾)

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