ファミリーの1歩先には親子スタイル

ブラジル珍道中準備編

それは6月も終わりに近い頃に届いた、一通のメールから始まった。

「夏休み、うちの孫たちはブラジルに行くことになりました。パスポート用意よろしく」


簡潔過ぎて全くわけがわからないため、思考停止から復活するやいなや、義母に問い合わせたところ、

・義父が仕事で取引しているブラジルの方が、日本とブラジルのパイプ的存在であり、日本のサッカー界も結構お世話になっている。何を隠そう、あのキング・カズも、この方がお世話をした。

・今回、広島からユースクラブが遠征に行くので、そこについでにお宅の孫も入れて一緒においでよ、と誘ってくださった。

・日本でもよくブラジルへのサッカー留学はあるが、だいたいがプロでも2部以下のチームで、滞在先の環境も芳しくないので、今回は日系の良いホテルに滞在し、練習先は世界でも有名な伝統ある強豪クラブ、サンパウロFCにした。滅多なことでは入れないので、いい経験になるよ。

・おじいちゃんが可愛い孫たちのために費用だしてあげちゃう!こんなチャンスないよ!

ということであった。

確かにこんなチャンスは無い。問題は私の仕事の都合がつくか、息子が勝手な行動をして行方不明にならないか、色々なアレルギーを持つ甥や息子の食事が無事に用意できるか、だけである。
幸い、私の休暇は、理解ある社長様のお陰で、夏期休暇と組み合わせて取得でき、食事はお招きくださったブラジルの方々がきちんとお世話くださるということで、あとは息子に、いつものようにふらふらと出歩いたら、二度と日本に戻れないどころか、生命の危険もあるのだ、ということを何度も言って聞かせるだけとなった。

義父母が今回、甥と息子を地球の裏側に行かせる気になったのには、他にも理由があった。
まず、夫や義姉のときと同じく、10歳を過ぎたら海外に行かせて、広い世界を見せる必要があるということ。
自分たちのように恵まれた生活を送っている子どもは、世界レベルで見たらわずかでしかなく、その幸運をよく考えること。
どんなスポーツでも、仕事でも、一流であることというのはどういうことかを体験すること。
繊細で内気で、常に他人の目を意識してしまう甥には自己表現の必要性を、やんちゃで野放図で、アスペルガー疑惑濃厚の息子には、集団行動の大切さを知って欲しい、という願いもあったが、特に息子に関しては、あまりにも日本という国の教育システムが彼に合わないようであれば、留学という進路も視野に入れるべきでは、という考えもあった。

愛情深い祖父母が色々と考えてくれた上で費用も出してくれる、ということには全く思い至らず、甥と息子はブラジルでサッカー三昧、という一点しか念頭に無く、
「はーやくこいこい夏休み♪」
と浮かれ過ぎ、勉強にも先生の注意にも全く身が入らず、金管クラブの練習をさぼりまくった息子はクラス全員の前で私に怒鳴り飛ばされ、びびったクラスメイトが心配して毎日息子をクラブに連れていくことになり、甥はせっかく入った名門私立中学で成績を落としに落とし、補講を食らった挙句に高校進級の危機まで申し渡されるという、従兄弟揃って、渡航前に母親二人を三回は憤死させてもおかしくないほどの愚行に精を出している頃、私たち母親は準備に追われていた。

1. 英文カルテの所持と提出、緊急時の薬、常備薬、睡眠障害予防薬のため、アレルギー主治医、小児精神科医の診察と検査を受ける。
2. ブラジルは子どもだけ、片親だけで出入国する際は親の同意書を必要とするため、ビザ申請時に、父親による同意書と、その同意書の証明に戸籍謄本と印鑑証明をつけて提出。
3. 息子を小奇麗にして、じっとさせて写真を撮る、パスポート申請書に読める字で自分の名前を書かせるという、高度かつ忍耐のいるミッションを遂行する。
4. パスポートは申請は代行できても受け取りは本人なので、私の仕事と、学校や部活の合間をぬって息子を連れて受け取りに行くという、ものすごいスケジュール調整をする。
5. 古くなった携帯を機種交換に行ったら、その前月に機種交換した息子の携帯はブラジルでは使えない(他国では使える)ことが判明したので、レンタルの手配。
6. 馬鹿みたいなパケット代や電話代を使いたくないので、レンタルのwifiルータを手配し、日本への連絡はスカイプとgmailで行えるよう手配と周知。
7. 誘拐と息子の怪しい歯磨きを念頭に入れ、海外旅行保険は救出費用が無制限、歯科保険付のものに加入。
8. 震災の影響で入手しづらい中、大きなスーツケース一個分のアレルギー非常食料を買い揃える。
9. ようやく手配できた薬や食料の持ち込みを許可してもらうため、領事館や航空会社に医師の英文カルテをつけて申請書を提出。
10. 英語とポルトガル語で、自分のアレルギーを説明できるよう、親子で特訓。
11. ブラジルの人々に受けるお土産は何がいいか調査した上で買い物。
12. レートを調べて両替。
13. 普段使っているクレジットカードではなく、旅先で失くしてもいいように新しいカードを作成、そのついでに、どこの空港でも使えるプライオリティ・カードを作成。
14. 留守中の仕事をフォローできるよう、業者、社内システム、持ち出し用マシンなどの準備。

上記に加え、日々の家事、仕事、学校行事、アスペルガー疑惑がある息子のセラピー通院をこなし、更に息子の体調管理をするのである。行く前に私も義姉も精魂果てた思いになっていた。
ちなみに、かかった費用は10万円を超える。

そこへ、一大事件。出発の一週間前、なんと甥がサッカー部の練習中に手首を骨折したのである。
小学生時代、受験勉強のためにサッカークラブなどに入っていなかった上、生まれつき体がかたい甥は転ぶのが下手で(そもそもフォームもくせがある)、そこへもってきて、妙に足が速いために加速がついた結果であろう。

こりゃもう中止か?と全員が思ったが、医者は手首だから大丈夫、と言うし、当の本人がどうしても行きたいと主張したため、ではこのまま行きましょう、ということになった。

かくして、甥と息子の海外旅行は、母親の多大な犠牲と努力によって、どうにか出発の日を迎えたのであった。

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