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飯田先生が語る「思春期のメディア、その魅惑と可能性」 飯田豊プロフィール

前回、東京国立近代美術館で開催中の「ヴィデオを待ちながら --映像、60年代から今日へ」展(6月7日まで)を取り上げ、ヴィデオアートの魅力について少しだけ話しました。

その展示のなかで、僕が特に面白いと思った作品のひとつが、ダラ・バーンバウム(Dara Birnbaum)という作家の「テクノロジー/トランスフォーメーション:ワンダーウーマン(Technology / Transformation: Wonder Woman)」(1978〜79年)でした。この作品では、アメリカン・コミックのヒロインを主人公とする連続ドラマ「ワンダーウーマン」から、特殊効果をともなう特定の映像(=主人公の変身シーン)が切り出され、それが編集によってつながれ、立て続けに観客に示されます。こうすることによって、各シーンに込められた視覚効果が剥き出しになり、テレビ番組に仕掛けられたマス・コミュニケーションとしての作用を浮き彫りにします(・・・なんて、言葉で説明しても伝わるはずがないので、ぜひ直接ご覧下さい)。ちなみに、この作品にきわめて近い手法を、若手の現代美術家である東野哲史さんが用いていることを思い出しました(ウェブサイトに映像作品が公開されています)。

コンピュータ・グラフィックスが発達する以前、実験的な映像制作の手段として注目されたのがヴィデオであり、1970年前後には、ヴィデオアートの始祖とされるナムジュン・パイクをはじめ、多くのアーティストがテレビ局と恊働で作品を制作していました。この展覧会に展示されている、村岡三郎+河口龍夫+植松奎二「映像の映像 --見ること」(1973年)もそのひとつ。番組を受像しているテレビの画面に絵の具を塗ったり、受像機を地中に埋めたり、海に投げ込んだり、ガムテープで画面を覆ったり、そして最後はハンマーで粉々に粉砕します。この映像はNHK神戸放送の「兵庫の時間」という番組のなかで実際に放映されたそうで、今日ではあり得ない試みです。テレビにその"外側"から行為を加えている様子が、テレビの"内側"で繰り広げられているわけで、とても奇妙な感覚に陥ります。作品の冒頭、以下のようなナレーションが流れます。「この映像は、テレビのための映像であります。ある行為のドキュメントを伝達するための映像ではありません。強いて言えば、見ることの問いかけとしての映像であり、今あなたが見ているブラウン管とともに初めて見る映像の作品となるものであります。あなたが、これら映像を見終わった後、この映像のことを他の人に話して伝えてみても、それはもはや意味のないことであります。(以下、略)」。

昨年に出版された『メディアアートの教科書』という本のなかで、ヴィデオアートを特徴付ける性格について、次のようにわかりやすく説明されています。「それは同じ電子的な映像を使っていても、テレビの放映と比較すると非常にプライヴェートな性格を持ち、テレビのマスメディア性の対極に位置するものとして認識された。初期においては、このマスメディアとしてのテレビとの関係が注目され、発信者/受信者という構造を変革するメディアと考えられた」(白井雅人・森公一・砥綿正之・泊博雅編『メディアアートの教科書』フィルムアート社、2008年)。

そうした実験はやがて、コンピュータ・グラフィックスが中心的に担うようになります。ヴィデオは相対的に古いメディアになってしまい、身体的なパフォーマンスや空間的な展示構成を織り交ぜた作品が目立つようになりました。それにも関わらず、いつでもケータイのカメラで写真を撮るという行為が日常化し、街中のどこにも監視カメラが溢れている今日だからこそ、公的/私的の境界線を揺さぶる初期のヴィデオアート作品の数々には、かえって新鮮な驚きを感じました。

もっとも、たくさんのヴィデオアートを美術館で鑑賞するというのは、かなりの忍耐が必要になります。あまりに上映時間が長い作品は、タイムテーブルが提示され、背もたれのある椅子が並んだシアタールームで上映されることもありますが、多くの場合、会場に備え付けられたモニターやスクリーンにループ(繰り返し)再生されており、必ずしも冒頭から作品を鑑賞することができません(他に誰も観ていない場合、いつでも冒頭から再生できるように鑑賞者が操作できればいいのに・・・といつも思います)。ちなみに、この展覧会に展示されているすべての作品の上映時間を足し算してみると、実に12時間(!)を超えたのでした(笑)。

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