このところずっと体調を崩してしまっていて、眼前の仕事をこなしていくだけで精一杯の日々を過ごしていました。風邪をひいてから二週間、ずっと咳が治まらなくって、一時期は百日咳をうたがいましたが、どうやらそこまでひどいものではなく、ねばりづよく体質改善をするしかないようです。季節の変わり目、みなさんもどうぞご自愛下さい。

以前の記事で予告をさせていただきましたが、6月12日(土)、僕の住んでいる広島県福山市にあるシネフク大黒座という老舗映画館で、「シネマ・クリティーク」というトークイベントをおこないました。映画の上映後、支配人さんと二人で40分ほど解説・批評をし、その後さらに1時間、カフェスペースでお客さんを交えた談話会をおこないました。
取り上げた映画は『フローズン・リバー』(2008年アメリカ)。支配人さんが今、激オシの映画だということもあるのですが、僕としては作品そのものの良さというよりも、トークイベントとしての扱いやすさを重視して、いくつかの候補のなかからこれを選びました。たとえば、同じ時期に公開されていた『ソラニン』(2010年日本)は、結末の余韻があまりにも心地よくって、終映後、中年に差し掛かりつつある男二人が壇上に出てくるというのは、ちょっとあり得ないというか、迷惑以外の何ものでもない気がします。
『フローズン・リバー』の詳細については、公式サイトをご覧いただきたいですが・・・一言でいえば、物語の舞台はカナダとの国境に近いニューヨーク州最北部の町。ぎりぎりの経済状況で子ども二人を育てている白人女性と、先住民の保留地に住むモホーク族の女性。人種の異なる二人の女性が、家族のために違法な仕事に手を染めていく姿を描いたサスペンスタッチのドラマです。主人公たちの姿に観客は共感しつつも、どっぷりと感情移入するためには相当の異文化理解が必要であるため、オプションで解説をつけるには適しているのではないかと考えました。とはいえ、民族問題やジェンダーが僕の専門というわけではないので、隙のない解説を展開するというよりは、その後に設定している談話会を念頭に、ネタを提供すればよいというくらいの気楽さで臨みました。
正直いって舞台上、スクリーンの前で話をするというのは、かなり照れました。あらかじめ30〜50名の集客を見込んでいたのですが、70名を越える方が来て下さって、イベントの集客としては大成功だったといえます。談話会には十数名の方がお付き合い下さいました。その反面、特別学割(1,000円)を設けてもらっていたので、授業などでもチラシを配って告知をしていたのですが、来てくれた学生はそれほど多くなかったです。普段あまり映画館に足を運ばない学生にとっては、「安いからちょっと行ってみよう」と思うような映画ではないので、まあ、やむを得ませんが。ただし来てくれた学生は、トークのさいにマイクをまわすと、しっかりと感想を発言してくれて、それが談話会の呼び水にもなってよかったです。
このイベントは老舗映画館の活用の仕方を模索する実験の意味合いもあったので、企画を考えるところから無給でお引き受けしました(謝礼に劇場招待券を頂戴しました)。前にも書きましたが、商店街という立地の影響もあって、中高年のお客さんが比較的多いようで、この日のイベントも実際そうでした。カルチャーサロン的な方向性を打ち出したいというのが映画館の狙いです。
談話会は中高年層と(僕が誘った)大学生たちで、図らずも異世代交流の色合いがあったのですが、これは学生たちにとっても良い経験になるのではないかと感じました。そういえば、公式サイトに掲載されているコートニー・ハント監督のインタビューのなかに、「理解ある母親のおかげで、まだ小さいうちから、他の子供は見ないような名作映画に連れて行ってもらえたんです。おそらく、当時のテネシー州メンフィスは本当に閉鎖的な社会だったので、彼女にとって映画館は、私に"本当の世界"を教える唯一の手段だったのかもしれません」という発言があります。映画そのものが社会を知るための教育メディアになり得るように、仕掛け次第で映画館という空間も、社会勉強のためのツールになり得るのかもしれません。
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