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産経新聞2011 6月18日
『教育 消えた偉人物語』武蔵野大学教授・貝塚茂樹
『「礼儀」 「型」が品位、品格を形成する』より抜粋

 『修身教科書では、「せいとん」「ぎょうぎ」「礼儀」「公徳」の項目が多く設けられ、正しい礼儀作法の「型」が具体的に記述されている。「人と食事をする時には、みんなで楽しく飲食するやうに心掛け、食器の類を荒々しく取り扱ったり、さわがしく物音を立てたりしないようにしませう。(中略)汽車・汽船・電車・自動車等に乗った時には、人に迷惑をかけないやうにすることはもとより、不行儀なふるまひをしたり、卑しい言葉づかひをしたりしてはなりません。(中略)又、人の顔かたちや身なりなどをあざ笑ったり、とやかく言ったりするのも、かたくつつしむべきことであります」
 
 しかし修身教科書の趣旨は、単に礼儀作法の「型」を列挙することにあったわけではない。「人に対しては恭敬の念を失わず、礼儀を正しくしなくてはなりません。礼儀が正しくないと、人には不快の念を起こさせ、自分は品位をおとすことになります」と記述しているように、礼儀作法の型を身につけることが、人間としての品位と品格を形成する方途であると説いていたのである。
 
 こうした項目で取り上げられたのが、本居宣長、松平好房、細井平洲、乃木希典である。特に、雨の日に濡れた外套を着た乃木が、車内で席を譲られても丁寧にお礼を言うだけで決して腰をかけず、側近にも外套を持たせなかったという逸話は、乃木の人となりを清々しく描いている。
 
 「価値の押し付けはいけない」という戦後の風潮の中で、戦後教育は、礼儀作法を教えることを無視し続けたが、その一方では、物事の原因を内面的な心の問題に還元する心情主義を過度に強調してきた。 しかし、礼儀作法の「型」をしっかりと教えること、いわば「型から入る」教育にも
っと目が向けられてよい。』


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